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魅惑の首筋 2 「はぁー・・・。」 9割くらいは驚いた勢いが理由で家を飛び出した私は、特に行くあてもなく里内をとぼとぼと歩いていた。 カカシさん、まさかあそこまで怒るとはなぁ。 飛び出した手前、謝らなくてはいけないのはわかっていてもすんなりとは顔を合わせづらい。 どうするべきか、わかっていてもの頭はどうしようがぐるぐると回っていた。 「お、いらっしゃい。」 「ぇ?」 かけられた声に、顔をあげると反射的に脳では理解したが 身体についた勢いをとめるほどの距離はそこにはすでに存在していなかった。 ―ぽすっ よっては歩くそのままに自らの足で 目の前に広げられた両腕の中へと誘いこまれて行った図が完成した。 「いやァ、が自分から俺の胸に飛びこんでくる日がくるとはな。」 「え、あ、ゲンマさん?」 見上げた顔は、以前高らかとお兄ちゃん宣言をしたゲンマ。 「珍しいな、今日はムサシ連れてねぇのか。」 「あ、はい。ムサシくん、ふくとは折り合いがつかないみたいで・・・やっぱり犬と猫って相性よくないんですかねぇ。」 って、オイオイ。 この状況につっこみはなしかよ。 とは言いながらゲンマは成り行き上とはいえ、 ちゃっかりと腕を回してがっちりを確保している。 そして初めて聞く単語にゲンマは改めて首を傾げた。 ふく? ねこ? 俺が抱きしめててもなんも言わねぇくらいコイツを悩ませてんのはそれか。 ・・・・あとはコレだな。 「ねこのふくがどうした?コレはそいつが原因か?」 ゲンマはの右の首筋に出来ている真新しい痣にそっと触れた。 思い当たる人物は1人だけ。 しかし理由となると、の様子からどうやら恋人同士のスキンシップという訳でもないらしい。 「今ウチでふくっていうねこを預かってるんですけど、」 「ねこを?カカシさんたちよく許したな。」 「・・・ですよね。だからって私調子に乗っちゃったみたいで…」 「なにやらかしたんだ?」 「ふくと遊ぶのに夢中で、」 の言葉半ばでゲンマは事のだいたいを理解した。 ・・・カカシさんが、そのふくってねこに嫉妬したって話ね。 と、勝手に納得していた。 確かに、ゲンマの推測はあっている。 あってはいるのだが、違っていた。 「どうやらカカシさんの読書の邪魔しちゃったみたいなんです。」 「・・・はぁッ?!」 「うるさかったのでカカシさん、怒って私の首を噛んだんだと思うんですけど・・・」 オイオイオイオイ。 着地点が大幅にズレてんぞ。 コイツ、マジでカカシさんが本の邪魔されて怒ったと思ってんのか? の思考回路がはなはだ謎になって、瞳の奥を探ろうとまじまじと覗きこんでみるものの。 ・・・・・大マジだ。 本気でそう思っているらしかった。 「はぁー・・・」 「ゲンマさん?」 久々の絡みでがド天然だって事すっかり忘れてたぜ。 カカシさんもこれじゃァ苦労するな。 つけた痕が本人に効いてないんじゃな。 まぁ、でもそれなりの威嚇のつもりもあるのかもしんねぇけど。 「悪いが、俺には効かねぇな。」 「へ?」 確認するようにもう一度、紅くなったソコを撫で上げ ゲンマは頭を抱えて今度はしっかりと腕の中に抱きしめた。 「わ、わわわわ!ゲンマさん?!」 「わりィな、今だけ兄ちゃんは隅っこに置いとけ。」 「え、ぇと・・・それはどういう・・・」 「別にぃ?そのまんまの意味だろ。」 は俺が強引に抱きしめても暴れたりはしなかった。 「お兄ちゃん、なんて言ったけどよ?別に俺はいつだってお前を女に見てんだ。」 「そ、それは・・・・・・困ります。」 小さくなっていく声に、本気で困ってんだなって思ったら かわいそうな気もしたけどどこか可笑しくて。 そんながやっぱりかわいくて。 「わーかってるッて。別に答えなくていいよ、期待してねぇから。」 コイツはいくら抱きしめても、俺が女として見ている時は絶対に腕を回してくれない。 ふざけて抱きついてくる時はあるくせによ。 そんなとこばっかり敏感になってんじゃねぇよ。 はカカシさんだと決める前から、俺に勘違いすらさせてくれなかった。 「俺が思うに、」 「はい。」 「別にカカシさんはお前に怒ってる訳じゃないと思うぜ?」 「え?だって、じゃあこれは・・・」 「男ってのはな、大体のヤツがそんなもんなんだよ。」 「そんなもん、て?」 見上げるの顔に、 キスしてしまいたいと思う自分がいる。 でもそんなことできる訳がなくて、俺はの鼻を軽くつまんでやった。 「自分の女は独り占めしたいの。」 「むぅ。・・・わかんないですよ、それとこれのどこが関係してるんですか。」 つかまれた鼻を撫でながら、理解できない内容に少し不機嫌になっている。 「んー・・・お前もうちょっと教育してもらえ。紅さんとか、アンコはヤベーからやめとけよ?」 「もーゲンマさん、さっきから言ってる意味が全然わかりません!」 ついに困っていた眉が今度は吊りあがって、は憤慨した。 ・・・でもそんな所がかわいいとか思ってる俺は相当だと自分でもわかってる。 「はははは、わりぃ。とにかく、だ!別にカカシさんはお前に怒っちゃいねーよ。」 「・・・なんでゲンマさんが分かるんですか。」 「そりゃー俺もカカシさんと一緒だからだ。」 「男ってことですか?」 そうだけど、ホントのところはちょっと違う。 俺もを好きな奴の1人だからな。 まぁ、そんなコトは言わねぇけど。 「ま、そんなとこだ。」 まだ納得いかないのか、うんうんうなりながら 俺につむじだけを見せて考えているようだった。 「気にすんな、そのうち追っかけてくっから。」 「なんでそんなことまでわかるんです?」 なんでって、・・・・カカシさん犬タイプだからなぁ。 なんて言ったら怒られそうだから口にはしないけど。 実際あの人、どこでなに聞いてるかわかんねぇしな。 「カカシさんがの彼氏だからだ。」 お前恋愛初心者だからなぁ。 そっちにばっか脳みそ使ってっとそのうち知恵熱でんじゃねぇの? なんて、私のことを明るくからかいながら頭上でからからと笑っている。 なんだかいつも 結局はゲンマさんに甘えてしまっている気がする。 きっと私はゲンマさんに残酷なことをしているのに。 ホントはこんなに優しくしてもらえるわけないのに。 「甘やかしすぎと思います。」 「俺?」 「はい。」 「そりゃア、お前。妹はもれなく可愛がるもんだろ?つーか、実際かわいいんだしよ。」 ストレートな言葉に自分でも顔が赤くなっているのがわかる。 ・・・かわいいとか、 そういうことをいわれても反応に困る。 「ま、でも俺も命が惜しいからな。この辺でやめとくわ!」 今の今まで触れていた腕を、ゲンマは急に手放した。 「え?」 「どっちかっつーと、今のカカシさんは俺に激怒中〜〜」 「っスよね?カカシさん。」 「え?え?」 は急すぎる展開についていけず、首をあっちこっちに回していた。 「ん、せーかい。わかってるんなら初めっからやんないでもらえる?」 どこから現れたのか、どこから見ていたのか。 忍の本領を発揮して、カカシさんはいつの間にやら隣にいた。 でもゲンマさんが怒ってるっていうけど、カカシさん笑ってるけどなぁ? と、この男が隠さず笑っている時が恐ろしい、ということをはまだあまりうまく理解していない。 「犬に猫に人間に次から次へと大変っスね、カカシさん。」 「ホーント、とイチャイチャしてイイのはオレだけのはずなんだけどねぇ?」 「ははは。まぁたまにはいいじゃないっスか。」 「ダメ。」 「えー。」 「いーい?。ゲンマに近づいちゃダメ。アイツと仲よくすると妊娠するよ。」 「ちょ、ちょ!!に変な事吹き込むのやめてくださいよ〜〜。」 「だってこないだ一緒に組んだくの一がそう言ってたよ?ゲンマくん。」 「・・・・まぁ、いっスよ。、お前が妊娠してもちゃーんと責任とってやっからな。安心して俺と仲よくしような。」 「い、いや。あっあのだって私、は///」 突然引き合いにだされたは、 またしても顔を真っ赤にしながらもごもごと下を向く。 「・・・・・千鳥。」 「っだァ!!!??カカシさん、ジョーダン!冗談ですって。」 「うるさいよ。大丈夫、五代目にはそれとなくうまく言っとくから。」 「イヤイヤイヤ!大丈夫じゃないっス!! すんません、調子にのりました!!なのでその右手のものしまってください!」 「はァ〜・・・」 目の奥がマジだった。 なんとかカカシさんに右手に輝いていた千鳥をしまってもらうと 改めて俺の真正面にカカシさんは立った。 「あのね、はオレの婚約者なの。が妊娠するのはオレの子って決まってんの。」 「カカシさん・・・///」 「・・・おっしゃるとおりです。」 なんだかもう、そう言うしかない状況なんですけど。 「わかってんなら黙ってお兄ちゃんやってなさいよ。」 「へーい。」 おもしろくなくて、少々ふてくされていると 唯一出ている左目で睨まれた。 だけど、今回のを見ていてどうしても譲れない事がある。 「でも、これだけは言わしてください。」 「・・・なに。」 「やきもきすんのは察しますけど。あんま必要以上にコイツ悩ませんのはやめて下さい。」 「あんたらがぶれると俺が困る。」 鋭く光るゲンマの視線の奥を見せつけられて、 まだコイツに残る複雑な気持ちを知った。 「なーんてね、じゃァな。!」 ぽんぽん、と私の頭をなでてゲンマさんは去って行った。 ふと、隣を見上げるとカカシさんと目があった。 「帰ろっか。」 空いている手をカカシが握る。 「はいv」 久しぶりに2人だけで歩く帰り道。 「あの、カカシさん。」 「んー?」 「すみませんでした、私」 と言ってる途中でカカシさんが無理矢理言葉を奪っていった。 「うん、確かににほったらかしにされてオレ寂しくて干からびるかと思ったよ。」 優しく笑いながら私を見る左目に、それが嘘ではないと知る。 ゲンマさんが言っていた通り、邪魔をしたから怒った訳ではなかったみたい。 にしても、 「本当にふくに嫉妬したんですか?」 動物に妬くなんて、と思ったらなんだかおかしくなった。 「そーよ、当たり前じゃない。」 「あははは、へんなカカシさーん。」 「うん、そーね。オレはがスキすぎておかしいんだ。 いつだって独り占めにしたいし、が接するオレ以外の物を全て消し去りたいって思うときがある。」 「けどさ、実際そんなのムリでしょ?」 と笑うカカシさんは、いつものカカシさんだ。 びっくりした。 その所為で、反応が少し遅れた。 「だーいじょうぶ、そんなのしない分別くらいオレにだってありますー。」 まだ顔が強ばっているのか、カカシさんは私の頭をなでながらふざけた雰囲気を出そうとしていた。 でも今はさっきの言葉を消そうとすればするほど、空回りが浮き彫りなってしまっている。 「あー・・・ごめん。やっぱ引くよね、正直。ははは、言わなきゃよかったね。」 違う 「忘れて、そんなコト絶対にしないからさ。」 さっきの発言で痛いくらいに感じたのは 「忘れませんよ、絶対に忘れません。」 胸を焦がすほどの切なさ。 カカシさん、私だってそれを受け止めるくらい ちゃんとアナタが好きです。 「は?」 ちょいちょい、とはカカシにかがむように手招きで指示した。 辺りを伺い、誰も近くにいないことを確認すると口布を随分下までさげ始めた。 何をするのやら、と思ったカカシの思考を無理矢理止めるように はカカシの首筋に噛みついた。 「・・・・??!!!」 これにはさすがのカカシもびっくりだ。 「えへへ、これでおあいこです。」 「え、あのーサン?」 「マーキング・・・でしたっけ?自分のものって意味ですよねv」 だって、周りなんて関係なく私はもうカカシさんのだけのものだし。 カカシさんだって私だけのもの。 だけどそれをはっきり言葉で伝えるのは少し恥ずかしくて。 その場で時が止まっているカカシさんを3歩後ろに置いて、私は歩みを進めた。 一方で、その場から動けなくなったカカシは。 ねぇ、にキスマークのことちゃんと教えたほうがイイ? 聞きたくても、今はムサシは足元にはいなかった。 ててててってってーん。 ヒロインはマーキングを覚えたw ふくはもちろん後日ちゃんとご主人のもとに帰りました。 しかしその後も商店街に一緒に買い物に行くたびに カカシ先生が一方的に見えない火花を散らすといいと思いますww カカシVSゲンマでした。 次回のライバルは犬でっす。 <おまけ> 「あれ〜?ここ赤くなってる・・・・虫にでも刺されたかなぁ?」 「えーどれだってばよ?」 「サクラ、虫刺されの薬もってないか?」 「もちろん持ってるわよ、どこですかさん。」 「ここー」 「「「・・・・・・・。」」」 3人がそろっての後ろに立つ上司を見た。 「ん?」 本人は急に視線を感じてイチャパラから目線だけをあげると の首筋に注目しているところだった。 「(ナーイショv)」 しかし、口に人差し指をあててニヤリと笑うだけ。 「あれ?どうしたの、3人とも。」 なぜか黙りこむ3人に、首を傾げる。 イチャつくのも大概にして欲しいってばよ。 さん、あれがキスマークだって知らないのかしら。 ・・・・・ウスラトンカチがもう1人。 この時、稀に見るチームワークで第七班は結束していた。 |